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2006.10.08

隣の席の「フラガール」

今公開中の「フラガール」を見てきた。常磐ハワイアンセンターの(今は名前が違うらしいが)設立当時のお話で、フラダンスを披露するダンサーたちが物語の主人公だ。

映画の評論は専門ではないのでやめておくが、感想をいえばここ最近の日本映画の中では、とても面白い部類に入る映画ではないかと思う。何といっても笑えるし泣ける。

さて今回のテーマは、隣にいた観客だ。日曜日の初回ということで、観客もそれほどの入りでもない。座席もネットで事前に押さえてあるので、そこへ直行すればよい。それでも早めに映画館に着いてしまったので座席に座ることにした。

座った席の隣には、70歳を過ぎているだろうと思える白髪の老人男性がいた。日曜日ということもあるのだがネクタイなしのスーツ姿。身なりはけして悪くない。が、どう見ても、この娯楽映画には不似合いな感じがぬぐいされない。きっと出張か何かでこの街に来ていて、日曜日はやることがないので映画でも・・・・そんな雰囲気なのだ。

上映まであと5~6分というところで、その男性が話しかけてきた。
「ずいぶん客席が埋まってきましたね」
たしかに着席した頃よりは、観客の数は相当増えていた。
「そうですね。」と答えると。彼は安心したのか、今の心境を語り始めた。

・・・・自分はかつて常磐炭鉱の労働者の一人で、おそらくこれから始まる映画にも出てくるであろう炭鉱の社宅に住んでいた。出身地ということもあり、昔の炭鉱の風景が懐かしくて映画を見に来た。今は、とてもドキドキしていて、映画を見る前にこんな気持ちになったのははじめてだ・・・・という。

そうか、それで合点がいった。老人が一人で映画を見に来るにはわけがあったのだ。

・・・・炭鉱は閉山になり、大勢の仲間たちが常磐ハワイアンセンターに再就職をした。ほかの仲間たちは、各地の炭鉱に行ったり、私のように都会に出てきたものも大勢いた。私は運よく商売がうまくいって、こうして都会で暮しているが、一緒に来た仲間たちのほとんどは田舎に戻ってしまった。何か昔に戻れるようで、今はドキドキなんです。・・・・・

話を聞いているこちらも、凝縮された人生を垣間見たようで、いいようのない感銘を受けてしまった。

・・・・映画が始まったら泣いてしまうかもしれません・・・・

事実、上映中、彼は何度も涙を流していた。

映画のストーリーと隣に座っている白髪の男の人生、その二つが重なって、妙な感動を覚えた。

そういえば、「三丁目の夕陽」を見に行ったときも隣に高齢の観客がいた。そうか、彼らも映画を見に来ていることに違いはないのだが、どちらかといえば、かつての風景を見たかったのだろうか。つまり、映画を通して過去へ旅立ちたかったのかもしれない。

「フラガール」はメリハリのある音の構成も素晴らしい。それに何といってもジェイク島袋の音楽が涙を誘う。

上映終了後、その老人は抑えた口調で一言こういった。「面白かったですね~」。「はい」思わずうなずいた。

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